アトピー性皮膚炎と「不眠」

Q.
子供のころ湿疹がありましたが、中学生ころにはよくなっていました。
昨年夏過ぎたころから顔に湿疹ができて、あっという間に体全体に広がりました。
最近いろんなことがあって、夜余り眠れません。
(30歳男、小学校教諭)

A.
成人型のアトピー性皮膚炎を悪くするもの(悪化要因)はというと、まず上げられるのがストレスです。

この患者さん場合、はじめにできた顔の湿疹は、運動会の練習で日光に長く当たったためとか、その時の汗の影響、他にキク科の花粉や感冒、歯科治療、顔に塗ったものが合わなかったなどいろいろ考えられます。何かのきっかけで湿疹が再発し、よくならない状態が続くと、特に薬を使っていないときは、自分の体が抑えることができるところまで広がります。

アトピー性皮膚炎はしばしば自然によくなる傾向があります。
そんな自然治癒が何故起こるかと言えば、湿疹やアレルギーの原因がなくなることもありますが、子供の湿疹でみられるように、成長することで異常の部分を自分の免疫が抑えるようになるからです。

ということは、毎日の生活でストレスがたまり、いらいらして、睡眠不足が続くと、ちょつとした湿疹でもひどくなります。それまで元気な体が押さえ込んでいたアレルギーが症状となって現れることもあります。大学を卒業し、仕事を始めて、初めて花粉症になったというような例は少なくありません。

そんなとき、疲れた体を休めるために、患者さんに十分睡眠をとるように言うのですが、なかなか寝つかれないというような不眠の訴えを経験します。アトピー性皮膚炎の場合、かゆみのために寝られないということもありますが、全然かゆくないという返事も多いようです。

普通、アトピー性皮膚炎患者さんは昼間動き回っているとき、緊張しているときは、かゆくないものです。
仕事を終わって、自宅に帰って、ほっとしたところでかゆくなります。ベッドに入ってかゆくないのに寝られないということは、ある意味で昼間の緊張が続いていることを意味します。自律神経は交感神経と副交感神経に分けられますが、リラックスした状態で働くはずの副交感神経が働かず、血圧を上げたり、気道を開いたりする交感神経が主に働いていると、かゆくはなりませんが、眠りにくくなります。

仕事のことをあれこれ考えて寝られないということもあるかもしれませんが、睡眠をたっぷりとって元気な体を取り戻すことがアトピー性皮膚炎の治療でも大事です。


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