アトピー性皮膚炎と「接触皮膚炎」

Q.
23歳の主婦ですが、子どものときから湿疹があります。
最近ぬりぐすりでかえって悪くなるような気がします。

A.
接触皮膚炎には、化粧品、金属、ゴム手袋などが接触してできるアレルギー性の接触皮膚炎と、水仕事などの慢性の刺激でできる刺激性の接触皮膚炎(たとえば主婦湿疹)がある。
アトピー性皮膚炎ではこの接触皮膚炎が外用剤(塗り薬)で起きることがあり、気がつかないで、湿疹がよくならない原因の一つになっている場合がある。

接触皮膚炎を起こす外用剤としては、実にいろんなものがあり、中でも非ステロイド系抗炎症剤(アンダームやスタデルムなど)が最も接触皮膚炎を起こしやすい。
ステロイド系の外用剤(たとえばブデソン軟膏など)でも起こることがあり、この場合ステロイドで湿疹をよくしながら同時に悪化させるといった訳の分からないことになる。

保湿剤でも見られ、一般に油性のものよりもクリームタイプのものの方が起こしやすい。
クリーム剤は塗り心地がよいが、保存料、乳化剤などがいろいろ含まれているために、特に化粧品の合わない患者は使わない方がよい。
まれに、ワセリンやアズノールのような油性のものでも接触皮膚炎が起きることがある。
中には何を外用しても合わない患者もいる。

また、使っているうちにアレルギー反応が起きるものも多い。
たとえば、馬油は動物性で塗り心地はよいが、使っているうちに馬アレルギーが起きることがある。
他の外用剤についても同じことがいえ、常に接触皮膚炎が起きる可能性を念頭に置いて外用剤を使うべきである。

ステロイドは接触皮膚炎を起こしやすくするという意見がある。
ただ外用剤が合わなくなると、ステロイドを内服する以外にない場合がある。

外用剤による接触皮膚炎は顔で多い傾向がある。
もともと化粧品などで接触皮膚炎を起こしていることに加えて、特に非ステロイド系の外用剤を顔で多く用いること、日光の影響が加わった光線アレルギー性接触皮膚炎が原因となっている。

次回は、外用剤による接触皮膚炎の症状の見分け方や治療について述べたい。

Q.
28歳の公務員です。
何年か前から全身に湿疹が広がり、皮膚が厚くなり、塗り薬をつけてもよくなりません。

A.
アトピー性皮膚炎が治りにくい原因の一つとして、外用剤(塗り薬)による接触皮膚炎があることを、前回説明した。今回はまずその症状と見分け方ついて述べたい。


たとえば、非ステロイド系抗炎症剤(アンダームなど)が合わないとき、外用すると、早ければ翌日ころから腫れあがるくらい真っ赤になる。ただはじめのころは症状が出るまで外用後2、3日かかったり、もともとの湿疹と区別がつかないことも多い。
特に、ステロイドを併用していると分かりにくい。ぬってから日光に当たったところだけが赤くなることもある。
乳幼児は起こりにくいが、全くないとは言えず、このタイプの外用剤を使うことが多いだけに注意が必要である。
母親が子供につけた外用剤をつい自分の顔にぬって、接触皮膚炎を起こすこともある。

ステロイドや保湿剤の接触皮膚炎はもっと診断が難しい。とにかく、外用しているところの湿疹がよくならず、何もつけていないところに湿疹が無く、その境界がはっきりしているとき、まず疑われる。
たとえば、手が届きにくい背中の中央に湿疹が無いような患者がいる。
掻きにくいからとも解釈できるが、外用剤がぬりにくいために湿疹が出来ていない場合がある。
使っている外用剤が体の部位で異なれば、症状の違いから接触皮膚炎を疑うことがある。

外用剤が合わないかどうか判定する方法として、体や手足の左右で違う外用剤を使って塗り分けるやり方がある。
保湿剤やステロイドの接触皮膚炎は症状が現れるまで時間がかかることが多く、塗り分け効果を判定するためには、最低2週間は必要である。

また、どこか1カ所を選んで外用剤を止めて、その部分の経過をみるのもよい。
いきなり全身のステロイド外用剤を止めると、リバウンドを起こしやすく、賢明な方法ではない。

次回は、外用剤による接触皮膚炎を疑うときの対策法について述べたいい。

Q.
30歳の主婦です。
子供のときから湿疹がありましたが、出産してからひどくなりました。
子供にもらった塗り薬を顔につけたところ、真っ赤になってしまいました。

A.
外用剤(塗り薬)による接触皮膚炎について、前々回、前回ではそれの考え方、診断法、症状などについて述べた。今回は外用剤が合わない場合、どうすればよいか考えてみたい。

質問された人は、非ステロイド系抗炎症剤の外用剤で接触皮膚炎を起こしたものであり、まずその塗り薬をやめることが重要である。
ただ、使っていたものを中止しても、成分が皮膚の内部に残ることも多く、年余にわたって湿疹が続くことがある。症状が強いとき、なかなかよくならず他の部位に湿疹が広がるときは、ステロイドの外用剤やプロトピック軟膏(免疫抑制剤)をつけるしかない。
顔面にステロイドをつけるときは、ステロイド皮膚炎にならないように十分な注意が必要である。

ステロイド外用剤で接触皮膚炎を起こしているときは、治療に苦労することが多い。
まずそれを正しく診断することから始まるが、はっきりしないときは、前回説明したように、左右で違う外用剤を塗り分けるしかない。
一般に、クリームタイプよりワセリンタイプの方がよいが、中にはむしろローションタイプの方がよい患者もいる。
また、ゲンタシンなどの抗生剤は含んでいない方がよい。ステロイドそのものに接触皮膚炎を起こしていることもあり、少なくとも薬の種類や製薬会社を変更して症状の変化をみるのがよい。

保湿剤や薬を溶かしている基剤で接触皮膚炎を起こしているときは、さらに対応が難しくなる。
クリームやローションタイプの保湿剤は保存料、界面活性剤などいろんな添加物を含んでおり、少なくともワセリンより接触皮膚炎を起こしやすいと言われている。
そんなワセリンも合わない患者がおり、結局油分をほとんど含まない化粧水のようなもの外用したり、全くの無外用で経過をみることがある。
外用剤を中止して抗ヒスタミン剤や漢方の内服だけにしたり、最後の手段としてステロイドの内服で治療する場合もある。


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