アトピー性皮膚炎と「汗」

Q.
6歳の男の子です。
冬場は皮膚が乾燥しているだけですが、春が過ぎたころから肘の内側や膝の後ろに湿疹ができます。
皮膚科でもらったクスリをつけるとすぐによくなりますが、またでてきます。

A.
アトピー性皮膚炎患者は、運動や入浴で汗をかくとかゆくなる。
むしろ汗をかいてかゆくなければ、本当にアトピー性皮膚炎かと疑うこともある。

汗は体温調節に関係した温熱性発汗と緊張したときなどに出る精神性発汗に分けられる。
自律神経の交感神経に支配されるが、副交感神経によるものもあると言われる。
なお、交感神経は血圧を上昇させるが、気道を開く作用もあり、これがあまり働いていない夜間は喘息発作やかゆみが出やすい。

アトピー性皮膚炎患者が汗をかくとかゆいのは、汗管が湿疹の炎症のために途中で詰まり、汗が出にくいためという話がある。汗が皮膚の内部で広がれば、汗疹(あせも)や汗疱となる。
アトピー性皮膚炎の肘や膝の内側など汗の貯まりやすいところの湿疹は、一種のあせもという意見がある。
一方で、汗に含まれる物質によるアレルギー反応という説や皮下に漏れ出た汗が知覚神経を刺激するからという説や、神経の伝達物質であるアセチルコリンが関係しているという説もある。

アトピー性皮膚炎の患者にしばしば見られるものにコリン性蕁麻疹がある。
入浴や運動などで汗のかきはじめに嫌な感じのかゆみがあり、それとともにチクチクするような蕁麻疹が体を中心に出現する。
アセチルコリンの過敏症、汗刺激、汗管の閉塞によるものと言われる。汗のかき始めに多く、大量に汗をかく時期になるとむしろよくなることもあり、治療として積極的に汗をかくように指導している。
アトピー性皮膚炎の入浴時のかゆみも、この蕁麻疹に似たところがあり、日常的に運動することで汗をかくのがよい場合がある。

汗疹もまた汗のかき始めの時期に多く、むしろ汗が多くなる真夏になると症状が軽くなることが多い。
あせもの治療には、フエノール亜鉛華リニメントやカラミンローションなどがよく使われるが、広がるときはステロイド外用剤も用いられる。

汗の多いところの湿疹はかゆみが強く、注意しないととびひ(伝染性膿痂疹)にもなりやすい。
汗部位を越えて広がらないようなら、亜鉛華軟膏などで経過をみるのもよいが、患者の性格や訴えの強さを考慮すると、どうしてもステロイド外用剤に頼るざるを得ないことも多い。
汗は乾燥した皮膚の水分補給にもなり、同時に皮脂の分泌が活発になり、多少かゆいものの汗をかくほうがむしろよいことも多い。
ただ、アトピー性皮膚炎が重症化すると、夏場に悪化する場合がある。


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