(24).紫斑しはん        

 紫斑は、皮内や皮下の出血、すなわち血管の外に血液がもれた状態です。

 紅斑は圧迫すると消えますが、紫斑は押しても消えません。

 紫斑そのものには本来痛みやかゆみはなく、ステロイド外用剤などをぬっても効きません。

 小さいものを点状出血、皮下組織に広がって大きいものを斑状出血といいます。
 なお、大量に出血して皮下に貯留したものを血腫けっしゅといいます。

 アトピー性皮膚炎やじんましんで、かゆみのために強く引っ掻いていると、点状出血ができることがあります。
 これにステロイドを外用すると、点状紫斑はむしろ悪化します。

 高齢者が強いステロイド外用剤を長期に用いていると、皮膚がだんだん薄くなり、少し当たっただけで皮下出血ができやすくなります。
 若い人にも見られることがあります。
 特に、長い期間にわたってステロイドを内服していると、皮下出血、すなわち紫斑ができやすくなります。


85歳男性にみられた前腕の皮下出血(紫斑)です。
私自身、それほど強いステロイドを使っているつもりはありませんが、高齢者にステロイド外用剤を長く使っていますと、このようなことが起きるのは仕方ないかもしれません。
紫斑にステロイド外用剤を間違えて使わないように、指導するのが重要です。

 紫斑ができる原因としては、血小板異常や凝固因子異常などによる血液凝固異常、血管壁脆弱ぜいじゃく化、血管内圧上昇、血管炎などが考えられます。

1. 血小板減少性紫斑病
 原因不明の特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と他の疾患や薬剤が原因で起きる続発性血小板減少性紫斑病に分けられます。
 前者の特発性は、感染症に続いて起きるタイプは小児に多く、原因不明で女性に多い慢性のものもあります。

 後者の続発性には、
  薬剤や化学物質、
  放射線、
  ウイルスなどの感染症、
  骨髄疾患、
  肝脾腫、
  巨大血管腫
 などが原因として考えられます。

2. DIC
3. 血小板機能異常
4. 血友病

5. 血管支持組織の脆弱化。
 老人性紫斑が代表的なものですが、
 他に、ステロイドの長期内服や強いステロイド外用剤の使いすぎで起きるステロイド紫斑
 エーラス・ダンロス症候群、
 壊血病、
 
デビス紫斑(女子の四肢、特に膝周囲に現れる紫斑で、時に関節痛を伴います。1週間程度で消えます)、
 ブラックヒール(運動選手の足底、かかとにできる点状出血)などがあります。

6. アナフィラクトイド紫斑アレルギー性紫斑病)。
 主に、下腿・足背の点状紫斑です。
 関節痛を伴うこともあります。
 上方に拡大すると重症になり、腎臓内部で出血すると、血尿や蛋白尿がみられ(紫斑病性腎炎)、腸管内で出血すると、腹痛、下痢、下血が出現します。

 原因として、何らかの感染症のアレルギー、薬剤、食物アレルギー、自己免疫的要因などが考えられます。

 治療は安静が重要で、特に腎炎などが現れると、入院してベッド上絶対安静となります。
 走り回ったり、運動は禁物です。
 アドナやトランサミンなどの内服、感染症が原因なら抗生剤内服しますが、あまり即効性はありません。
 重症になると、ステロイド、免疫抑制剤、DDSなどの内服、血漿交換などが行われます。

 多くは時間とともに軽くなりますが、しばしぱ折角よくなっているのに再発します。

7. 特発性慢性色素性紫斑は主に下腿にできる原因不明の紫斑で、いろいろあります。
 マヨッキー血管拡張性環状紫斑はかゆみはなく、下腿にできて、色素沈着となります。
 シャンバーグ病は下腿の点状紫斑が多数集まったもので、循環障害によるものと考えられます。
 紫斑性色素性苔癬様皮膚炎はかゆみがあり、湿疹になります。



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